【歌で使う「しゃくり」についてのボイストレーニング(ボイトレ)テクニック】
最近は、ヒトカラも当たり前になり、カラオケのブームも変化してきています。また、採点機能も音程やリズムだけでなく、しゃくり、こぶし、フォールなど、歌のテクニックも重要になってきています。あくまで機械で採点されますが、歌唱力も採点に加味できるように進化しています。
今回は、歌で使う「しゃくり」について、ボイストレーニング(ボイトレ)を含めわかりやすく解説していきます。カラオケの採点にも効果的で、実際に歌の歌唱力も上がると幸いです。
1. しゃくりとは…?
本来より低い音から発声
・ある音の高さを本来の音の高さより低い音から発声する歌い方(歌唱法)。
・音の出だしを下からすくい(ずり)上げるように歌うことでしゃくりが表現されます。
・カラオケでは、上に向かってカーブするようなマークがつきます。
1-1 効果
感情表現
・しゃくることによって楽曲の中の音を飾り、曲を豊かに表現、イメージをさらに膨らませます。
・感情を乗せやすくなり、歌に表情が生まれます。
・なめらかな印象を与えたり、柔らかい感じや深み、ノリを出したりすることができます。
・高い音が出しやすくなることもあります。
1-2 やり方
声の始まり
・本来の音の高さより低い音から発声し、本来の音の高さまで、2つの音の間を滑らせるようにしてなめらかに引き上げます。
歌い直す
・しゃくりたい音とその直前の音の間に間(ま。ほんの少し空いた時間)を入れて(つくり)、歌詞を歌い直すようにしてしゃくります。
直前の音とつなげる
・しゃくりたい音と、その直前の音をつなげるようにしてしゃくります。
1-3 ポイント
母音を意識
・出だしの低い音から本来の音の高さまで、2つの音の間を連続して滑らせるようになめらかに引き上げます。
・しゃくり上げる歌詞の母音(例えば、「か」の場合、母音の[あ])を意識してしゃくると、楽にしゃくることができます。
・しゃくるタイミングに合わせて、人差し指やあごを下から上に向かって動かしてみたり、おなかのの力を使って勢いをつけてみたりすると、しゃくりやすくなります。
1-4 入れやすい曲・場所
・テンポがゆったりとした曲やテンポの遅いところ
・息つぎの後の1音目
・しゃくりたい音の直前の音が、しゃくりたい音よりも低い場合
・しゃくりたい音の直前の音の歌い伸ばしが長い場合
・歌い伸ばしの長い音
2. しゃくりの度合い
深さ・スピード・タイミング
・しゃくる音程、しゃくり上げるまでの時間、しゃくり始めるタイミングについて解説していきます。
2-1 音程
・しゃくり始めの音の高さは、本来の音の高さの半音下、全音下、5度下、1オクターブ下などさまざまです。
・しゃくり始める音の高さによって、音の表情や聞き手に与える印象が変化します。
・2つの音の高低の差が広くなるにつれて、音の深みが増していきます。
2-1-1 しゃくる音程が広い場合の注意点
・しゃくる音程を広くすると、ねっとりとした印象が増して、聞き手に与える印象が良くない場合もあります。
・しかし、しゃくる音程の広さの効果については、ジャンルや聞き手の好みも関係してくるので、ねっとりとした感じが良い意味での表情として表現・評価されることもあります。
2-1-2 しゃくる音程の練習ポイント
・歌う前に、少し下、だいぶ下、かなり下、自分が出せる音域の中で一番低い高さの音。半音下、全音下、5度下、1オクターブ下などと、しゃくり始める音の高さに見当を付けておきます。
・事前にピアノで、しゃくり始めの音(半音下、全音下、5度下、1オクターブ下など)と、本来の音の高さを確認しておくと、しゃくりやすくなります。
・練習しながら、しゃくり始める音の高さの感覚を掴んでいきましょう。
・例えば、Aメロ、Bメロ、サビなどといったブロックごとに基本的なしゃくる音程を設定し、さらにそれぞれのブロックの中でもしゃくる音程の広さを変えて歌ってみましょう。
2-2 スピード
・しゃくり上げるまでのスピードとは、しゃくり始めてから本来の音の高さに到達するまでに要する時間のことです。
2-2-1 しゃくり上げるまでの時間を調整
・しゃくり上げるまでの時間は、長くしたり短くしたりと、長さを調節することができます。
・一般的には、すばやくしゃくります。ゆったりとしゃくって、深みを強調する場合もあります。自在にスピードを変えられるようにしましょう。
・途中でしゃくり上げるスピードを変えることもできます。余裕が出てきたら、途中でしゃくり上げるスピード変えることにも挑戦してみましょう。
2-2-2 素早く
・素早いしゃくりでは、リズムよく自然に聴こえる感じが表現できます。
2-2-3 ゆったり
・ゆったりとしたしゃくりからはさらに深みを感じます。
2-2-4 しゃくり上げるまでの時間が長い場合の注意点
・しゃくり上げるまでの時間を長くすると、ねっとりとした印象が増して、聞き手に与える印象が良くない場合もあります。
2-3 タイミング
・しゃくり始めるタイミングを遅らせたり早めたりすることができます。
2-3-1 もとの音の拍の位置から
・もとの音の拍に合わせて、しゃくり始めます。
2-3-2 もとの音の拍よりも先にしゃくり始め、もとの音が拍の頭に来る
・もとの音の拍の前に出してしゃくり始め、もとの音の拍の頭の位置で本来の音の高さまでしゃくり上げます。
2-3-3 もとの音の拍よりも先にしゃくり始め、もとの音が拍の後ろに来る
・もとの音の拍の前に出してしゃくり始め、もとの音の拍の後ろで本来の音の高さまでしゃくり上げます。
2-3-4 もとの音の拍の位置よりも後ろでしゃくり始める
・もとの音の拍の位置よりも後ろで(微妙にタメて)しゃくり始めます。
2-4 注意点
・しゃくり方が上手いと、曲のイメージをさらに膨らませることになりますが、逆にしゃくり方が悪いと、思い通りの効果を上げられず、歌に余裕がなくなったりすることもあるので、どこでどうしゃくるのかといったことをきちんと考えてしゃくりましょう。
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3. 実際の曲の中でしゃくりを入れてみる
・実際の曲の中でしゃくりを入れられる場所を書いてみます。短いですが参考にしてください。
3-1『ぞうさん』
・「⤴ぞうさん ⤴ぞうさん ⤴おはながながいのね ⤴そうよかあさんも ⤴ながいのよ」の「ぞうさん」の「ぞ」、「おなはが」の「お」、「そうよ」の「そ」、「ながいのよ」の「な」と「よ」のところでしゃくりを入れられるように練習してみましょう。
3-2『春が来た』
・「はるがきた はるがきた どこ⤴にき⤴た やまにきた さとにきた のに⤴もき⤴た」の「どこにきた」の「に」と「た」、「のにもきた」の「も」と「た」のところでしゃくりを入れられるように練習してみましょう。
4. 他のテクニックと組み合わせて使う
・しゃくりと他のテクニックを組み合わせることで、さらに表現力豊かなしゃくりの表現力を発揮します。
・音の出だしに付け加えたり、しゃくり上げるまで、しゃくり上げてから、そして、音の終わりに付け加えたりすることができます。
・組み合わせ次第では、3つ以上組み合わせることもできます。
・フレーズに相応しい音を得ることができるので、色々の組み合わせや度合いで試してみましょう。
4-1 「しゃくり」+「音量を変える」
小さく→大きく
・しゃくり始めの音を少し小さな音量で出して、しゃくり上げながら音量を大きくする。
・しゃくり始めの音を少し小さな音量で出して、しゃくり上げてから音量を大きくする。
大きく→小さく
・しゃくり始めの音をやや大きめな音量で出して、しゃくり上げながら音量を小さくする。
・しゃくり始めの音をやや大きめな音量で出して、しゃくり上げてから音量を小さくさせる。
・強さが変化していくことで、感動がより伝わってきます。
4-2 「しゃくり」+「音を震わせる」
・音を震わせながらしゃくり上げます。
・しゃくり上げてから音を震わせます。
・音の出だしから終わりまで音を震わせます。
・音の震わせ方を変えることで、音の際立ちや響きなど様々な効果を得ることができます。
4-3 「しゃくり」+「音の終わりで息を吐く」
・しゃくり上げた後、音の終わりで息を吐きます。
・音の終わりで息を吐いて、出す音を加えるテクニックは下記よりご確認ください。
4-4 「しゃくり」+「声の音色を変える」
・息もれ声でしゃくり上げます。
・しゃくり上げてから息もれ声に変化させます。
・音の出だしから終わりまで息もれ声で発声します。
・やわらかい声、かたい声、抜いた声、張った声、弱々しい声、力強い声、明るい声、暗い声、浅い声、深みのある声など様々な音色を組み合わせてみましょう。
・裏声を使ってしゃくってみると、また違った雰囲気を出すことができます。
4-4-1 「ボーカルフライ」+「しゃくり」
・音の出だしをボーカルフライで出してからしゃくります(しゃくり始めをボーカルフライで出し、しゃくり上げていきます)。
5. まとめ
しゃくり1つをとっても、これだけのやり方や効果があります。歌の上手さは、人それぞれの好みや感覚も関係してきますが、あなたの思うように歌を表現することはできるはずです。ボイストレーニング(ボイトレ)は、繰り返し練習することで少しずつ体に身に付いていきます。少しずつでも歌を練習して、しゃくりを取り入れ、歌唱力を上げていただけたら幸いです。
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